
SwiftやSwiftUIでアプリを作っていると、「GCD(Grand Central Dispatch)」という言葉を目にすることがあります。
ぱっと見ではなんだか専門的で難しそうに思えるかもしれませんが、アプリをサクサク快適に動かすためにはとても重要な仕組みです。
この記事では、GCDとは何か、どんな場面で使われるのか、初心者向けにわかりやすく解説していきます。
GCDとは?
GCD(Grand Central Dispatch)は、アプリ内で複数の処理を同時に行うための仕組みです。
例えば、重いデータをダウンロードしながらも画面がカクカクしないようにする、画像を加工している間もボタンをタップできるようにする――そんな「裏側でこっそり別の作業をさせる」ために使われるのがGCDです。
簡単に言えば、「同時進行の手助けをしてくれる仕組み」です。
なぜGCDが必要なの?
iPhoneやiPadのアプリでは、すべての処理が1本のメインの道(メインスレッド)を通って進んでいます。
このメインスレッドが「UI(画面表示やユーザー操作)」を担当しているため、重い処理(画像の読み込み、大量の計算など)をメインスレッドで行ってしまうと、画面が止まってしまうことがあります。
そこで、重たい処理だけを「別の道(バックグラウンドスレッド)」に任せて、画面は止めずにスムーズに動かす。
その役割を担うのがGCDです。
GCDの基本的な使い方
GCDは DispatchQueue というものを使って処理を振り分けます。
1. メインスレッドで処理する
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DispatchQueue.main.async { print("UIの更新など、画面に関わる処理") } |
mainは「画面処理の道」asyncは「すぐに実行せず、空いたときにやってね」という意味
2. バックグラウンドで処理する
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DispatchQueue.global().async { print("時間のかかる処理をここで実行") } |
global()は「裏方で作業してくれる道」- 重たい処理はここに書いて、アプリが固まらないようにします
具体的にどんな場面で使われているの?
以下のような処理をするときにGCDはよく使われます:
- ネットワークからデータをダウンロードするとき
- 大量の画像を処理するとき
- ファイルの読み書きをするとき
- 時間のかかる計算や処理をするとき
たとえば、画像をインターネットからダウンロードして表示したい時、次のようにGCDを使って処理を振り分けます:
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DispatchQueue.global().async { // 時間のかかるダウンロード処理 let image = downloadImage() // 結果をメインスレッドで画面に表示 DispatchQueue.main.async { imageView.image = image } } |
このように、重たい処理は裏でやって、結果だけ画面に反映するようにするのがコツです。
async と sync の違いって?
GCDでよく出てくるのがこの2つです。
違いを把握しておきましょう。
| 書き方 | 意味 |
|---|---|
async |
処理を「すぐに終わらせないで」他の作業と同時に進める(非同期) |
sync |
処理を「その場で終わらせてから」次に進む(同期) |
初心者はまず async を使うことが多いです。
UIが固まらないように非同期で処理させるのが基本になります。
GCDを使うときの注意点
GCDは便利ですが、間違った使い方をするとアプリがクラッシュしたり予期せぬバグにつながります。
代表的な注意点は次の通りです。
- UIの更新は必ず
DispatchQueue.mainで行うこと
→ 画面に関わる処理はメインスレッド以外でやるとアプリがクラッシュすることがあります - 重たい処理は
DispatchQueue.global()に任せる
→ ダウンロードやデータ変換などは裏側で実行しましょう - スレッドの競合に注意
→ 複数の処理が同じ変数に同時にアクセスするとバグになることがあります
よくある疑問:GCDとRunLoopって何が違うの?
GCDとRunLoopは、どちらもiOSアプリの処理に関わる仕組みですが、役割が異なります。
イメージしやすいように整理すると以下の通りです。
- RunLoop は「何かが起きるのを待って反応する仕組み」
- GCD は「いろんな処理を同時に進める仕組み」
RunLoopはイベントの待機・受け取りに強く、GCDは処理の同時進行に強い、という違いがあります。
両者は裏側で連携して動いています。
まとめ
最後に、GCDのポイントを整理します。
アプリ開発を始める段階では、以下を押さえておけば十分です。
- GCD(Grand Central Dispatch)とは:複数の処理を同時に進めてアプリを快適にする仕組み
- 重たい処理(ダウンロード、画像処理、計算など)を裏で動かしたい時に使う
DispatchQueue.global().async→ 重たい処理用DispatchQueue.main.async→ UI更新用
最初は「難しそう」と思うかもしれませんが、よく使うパターンだけ覚えておけばOKです。
アプリをスムーズに動かすにはGCDが欠かせない存在。
ぜひ少しずつ理解を深めて、快適なアプリ開発に役立ててみてくださいね!

